暦年贈与と相続税についてのQ&A
相続人に年間110万円の範囲内で贈与を行えば、相続税を払わなくても良いと聞いたのですが、本当ですか?
専門家の指導のもとで行えば、相続税対策になりますが、方法を間違えると、かえって大変なことになる場合があります。
まず、年間110万円の贈与であれば、贈与税がかかりません。
そのため、理論上、毎年110万円の範囲内で贈与をすることで、相続税の対象財産を減少させることができます。
しかし、この毎年110万円の贈与については、大きく分けて以下の2つのリスクがあります。
①毎年110万円の贈与を相続人にしたとしても、相続開始前の一定期間内の贈与については、相続税の計算対象になります。
②毎年行った贈与が、名義預金に入れられていた場合、贈与とは認められず、贈与額全体が、相続税の対象になる場合もあります。
このように、毎年110万円の贈与をすることは、扱いをまちがえると、大変なことになりますので、注意が必要です。
孫へ年間110万円の贈与を行っていますが、これで節税対策としては大丈夫でしょうか?
孫への年間110万円の贈与は、有効な場合もありますが、リスクもあります。
そもそも、孫への贈与が節税対策で有用とされている理由は、孫への贈与は、年間110万円までは贈与税がかかりませんし、相続人への贈与と違い、相続開始前の一定期間内の贈与が相続財産に含まれることがないからです。
また、通常は、子よりも孫の方が人数も多いため、孫も贈与の対象とすることにより、早期に相続税の対象となる財産を減らすことができることも一つの理由です。
もっとも、孫への贈与をする場合には、相続税以外に、贈与税が課税される可能性があることに注意しなければなりません。
具体的には、これまで行ってきた孫への贈与が一連のものとみなされ、多額の贈与税を支払わなければならない場合があります。
また、せっかく毎年110万円の贈与を行ったとしても、相続税申告の際に名義預金だとみなされ、結局は相続税の対象になる場合もあります。
そのため、「孫への贈与だから安心」と思わずに、毎年110万円の贈与をする際は、相続税に強い税理士等のアドバイスを受けることをおすすめします。
孫や相続人の名義の預金に毎年、110万円を振り込んでいるのですが、これで相続税対策としては、大丈夫でしょうか?
⑴孫や相続人名義の預金への贈与は慎重に
孫や相続人が振り込まれた預貯金を実際に使っている場合は問題ありませんが、名義預金や定期金給付契約に基づく定期金に関する権利とならないように注意が必要です。
⑵ 具体例
たとえば、父、子、孫の家庭で、父が孫に対して、年間110万円の贈与を10年間行ったものとします。
110万円の贈与であれば、贈与税の非課税範囲内なので、理論上は相続税がかかりません。
もっとも、110万円を孫名義の口座に振り込んだとしても、通帳の管理を父が行っていた場合、名義預金とみなされ、相続税申告の際、今まで振り込んだ預金の分も含めて課税される可能性があります。
また、毎年110万円の贈与が一連の贈与とみなされ、非常に多額の贈与税を支払わなければならなくなる場合もあります。
さらに、贈与契約書を作って贈与を行ってきたが、10年間で110万円を受け取れる契約とみなされると、契約時に贈与税を支払わなければならなくなります。
⑶ 毎年110万円の贈与は専門家の関与のもとに行う
このように、毎年110万円の贈与を行うことは、相続税対策に有効な場合もありますが、同時にリスクもあります。
インターネットの情報の中には、110万円の贈与を行えば、節税効果があると簡単に書いているものもありますが、実際は、贈与をする際は、専門家に相談するなど、慎重な対応が要求されます。
このように、相続税対策については、専門的な知識だけでなく、実務の経験が必要になりますので、毎年贈与を行う場合は、一度、相続税に強い税理士にご相談ください。
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